AIによるIMRTの自動安全性検証技術に関する論文がオンライン公開されました

東北大学大学院医学系研究科放射線腫瘍学分野と弊社で共同開発した強度変調放射線治療(IMRT)の自動安全性検証技術の研究が、英語学術論文誌「The Journal of Applied Clinical Medical Physics  (JACMP)」にオンライン公開されました。AIを用いたIMRTの自動安全性検証の新たな手法についての有用性を示した論文です。

Improvement of deep learning prediction model in patient-specific QA for VMAT with MLC leaf position map and patient’s dose distribution

Ryota Tozuka, Noriyuki Kadoya, Seiji Tomori, Yuto Kimura, Tomohiro Kajikawa, Yuto Sugai, Yushan Xiao, Keiichi Jingu

論文掲載ページ

https://doi.org/10.1002/acm2.14055

技術説明

放射線治療計画データの「患者内の線量分布」と「MLC motion map」を深層学習に入力することで、高精度に安全性検証の測定値を予測する技術

この技術を用いることで、従来行われています検出器による安全性検証(患者個別QA)を実施せずに、AIによってIMRTの安全性検証をバーチャルで行うことができます。これにより、安全性検証の効率化を実現することができます(約1時間→1分)。

補足説明

IMRTの治療計画は、多分割絞り(multi-leaf collimator: MLC)と呼ばれる放射線を遮蔽する複数の金属板を複雑に動かして照射できるため急峻な線量分布が作成できます。一方で、計画通り安全に照射できるかどうかを患者さんに照射する前に事前に検証する必要があります。複雑なMLCの動きによって極端な線量分布を作成しているため、MLCが計画通りに動かない場合には予期しない線量が危険臓器に照射されてしまう可能性があります。ただ課題として、この検証には1症例あたり1時間の検証時間が必要となることもあり、医療スタッフの業務量増加の大きな要因となっています。

事前の安全検証の風景 (下のページの右図参照)

医学物理士とは|日本医学物理学会 (jsmp.org)

さらに近年では治療回毎にその患者の状態に応じて治療プランを修正する即時適応放射線治療(Online Adaptive radiotherapy:Online-ART)と呼ばれる手法が普及し始めています。このOnline-ARTでは、患者さんが治療台にいる状態で治療計画を即座に作成し、その治療計画で照射を行います。そのため、従来のような検出器による実測検証が実施できません。そのため、この治療計画の検証の合理化は早急に解決すべき課題となってきています。

Online-ARTを実施できる装置の一例としてMR装置とリニアックが一体化したMR-Linacという装置があります。

次世代放射線治療装置 エレクタユニティMRリニアックシステム|東北大学病院 (tohoku.ac.jp)