早期肺がんの放射線治療計画、自動化の実現可能性を示唆 -山梨大学などの研究で「RatoGuide」活用-

AI技術による放射線治療計画支援サービスの開発・事業化を行うアイラト株式会社(本社:宮城県仙台市、代表取締役:木村 祐利)は、東北大学大学院医学系研究科(放射線腫瘍学分野)および山梨大学附属病院放射線治療科が実施した研究において、当社が開発・提供する放射線治療計画支援ソフト「RatoGuide(ラトガイド)」を活用し、早期肺がんに対する高精度放射線治療(SBRT-VMAT)※1 の治療計画を自動作成する技術の実現可能性が示唆されたことをお知らせします。

本研究は、治療計画にかかる人的・時間的負担を軽減しつつ、安定した品質の照射プランを作成することを目的に、深層学習技術を用いた自動化手法の臨床的妥当性を評価したものです。アイラトは本研究の設計・解析には関与しておらず、「RatoGuide」の提供を通じて研究を支援いたしました。

※1  定位放射線治療(SBRT)および回転型強度変調放射線治療(VMAT):SBRT(Stereotactic Body Radiotherapy)は、腫瘍に対して高線量を高精度に集中照射する定位放射線治療法です。VMAT(Volumetric Modulated Arc Therapy)は、線量分布を最適化しながらリニアック照射ヘッドを回転させて照射する回転型強度変調放射線治療法です。本研究で用いられたSBRT-VMATは、これらを組み合わせた回転型強度変調放射線治療による定位放射線治療であり、高精度放射線治療の代表的手法の一つです。これにより、病巣への線量集中と正常組織の線量低減を高いレベルで両立することが可能です。

研究結果のポイント

  • 自動計画では手動計画と線量評価指標(DVH)に有意差なく同等の品質を達成しました。
  • 臨床評価では2名の放射線腫瘍医がすべての自動計画を臨床上許容可能と判定しました。特に肺門型(中枢型)では肺野型(抹消型)に比べて好ましい評価を得ました。
  • 計画作成時間を平均約4.6~4.8分に短縮し、従来の自動計画作成手法(約30~60分)に比べ、大幅な効率化を実現しました。
  • 本研究は、AIが予測した理想的な線量分布を再現する、早期肺がんSBRT-VMATの自動計画作成を世界で初めて実証しました。

研究の背景・概要

SBRT(体幹部定位照射)にVMAT(強度変調回転照射)を組み合わせたSBRT-VMAT治療は、少ない回数で腫瘍に高線量を届けられる高度な技術です。しかし、こうした精密な照射計画は多くのパラメータ調整を伴う繰り返し計算が必要であり、何時間から何日もかけて作成していました。また、計画の質には計画者の経験によりばらつき、効率と質のバランスが大きな課題となっていました。本研究では、これらの課題を解決するためAIを活用しました。CT画像と腫瘍・臓器の輪郭情報を入力として、RatoGuideにより得られた理想的な線量分布の予測結果をリング状線量構造に変換し、治療計画ソフト(RayStation)で最終的な照射プランを自動生成します。この仕組みにより、計画者の経験に依存せず一定の品質を保ちながら計画作成を大幅に高速化できます。

論文情報

  • 論文名:“Evaluation of deep learning-based automated radiotherapy planning for early-stage lung cancer using SBRT-VMAT: A comparison with manual planning”
  • 掲載誌:Journal of Applied Clinical Medical Physics (2025年)
  • リンク:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41088571/

今後の展望

本研究で得られた成果は、RatoGuideが放射線治療計画の自動化において有効であることを示すものであり、他の治療部位や照射条件にも応用できる可能性を示唆しています。

今後は、国内外の医療機関と連携し、今回早期肺がんで検証した手法を前立腺がんなど他の部位にも展開し、AIによる治療計画のさらなる精度向上と臨床応用を進めていきます。

RatoGuideを用いたAI治療計画によって、治療計画時間の大幅な短縮と治療効果の最適化を実現するプロダクトを開発し、放射線治療の質と効率の両立に貢献してまいります。